【心がけたい行い】

 

 車が走る時、人が歩くとき、何のために走っているのか、どこに向かって歩いているのか、行き先が分からないというような、ばかなことを言ったら笑われます。私たちも、何のために生きてゆくのか、目標がわからないということは、おかしなことです。やり直すことの出来ない毎日毎日、そして再びくることのない一生を、私はどんなに生きればよいか、行いの心がけを佛さまに聞きたいと思います。

 

       〔恩返し〕

 

1.大人同士で挨拶をするとき「おかげで元気です」と、よく言います

  が、「おかげ」とは、どんな意味ですか。

 

  私を今まで元気に生かし育ててくれた多くの力が、自分でも気づか

  ない時、知らないところで用意してあったという、かくれて見えな

  いカゲの力でありますから「おかげ」と言うのです。たとえば、私

  たちの健康を守る予防薬など、外国の昔の人たちが研究してくださ

  った「おかげ」ということができます。

 

2.どんな「おかげ」がありますか。

 

  父母の恩、衆生の恩、国の恩、三宝の恩、そして、先生や友達の恩

  などがあると、お釈迦様は教えられました。

 

3.三宝の恩とは、どんなことですか。

 

  佛さま、真実の教えの法、佛さまの教えに従う人たち(佛、法、僧)

  のことを三宝といい、この三つの宝によって、私たちが恩を知り、

  本当の幸福の道を教えていただいた「おかげ」のことです。

 

4.先生や友達の恩とは、どんなことですか。

 

  知らなかったことを正しく教えてくださり、私たちが一人前になっ

  て社会の役に立つよう、いつも励まし導いてもらえる学校や社会で

  の、多くの先生や友達のおかげのことです。

 

5.このような恩(おかげ)をうけているとすると、私は一人では生きてゆ

 けないわけですか。

 

  そうです。私たちは、この世に一人では生きて行かれません。多く

  の人々、すべての物に助けられて私たちは生きています。特に、病

  気や災害を受けた時など、他の人々や物の力のおかげが必要です。

  ですから、このような多くの恩に気が付いた私たちは、ご恩に報い

  るよう生きたいものです。

 

6.恩に報いるとは、どんなことですか。

 

  いつも恩(おかげ)を忘れず、「ありがとう」とお礼を言い、恩返し

  する行いをすることです。

 

7.衆生(すべての生き物)の恩には、どうして恩返ししますか。

 

  めぐまれたものを無駄にしないよう、最大に活用することが大切で

  す。例えば、食事の前には「いただきます」、後には「ごちそうさ

  ま」と両手を合わせて感謝し、食べて元気になった力を良いことに

  使いたいと願います。

 

8.三宝(佛さま、教え、従う人)の恩に報いるには、どうすればよいので

 すか。

 

  ①三宝に両手を合わせて拝みます。

  ②三宝を尊び、口でほめ唱えます。

  ③佛さまの国に行きたいと願います。

  ④佛さまの教えを勉強します。

  ⑤佛さまの教えに従い、行います。

  この五つが報恩になります。

 

9.三宝を尊んで、どのように唱えるのですか。

 

  ただ、「ナモアミダブツ」と、唱えます。

 

10.佛さまは、どんなことを心がけて行うよう、教えられましたか。

 

  お釈迦様は、良い生き方をするため、八つの正しい道と、六つの立

  派な行いをすすめられました。

 

       〔六つの行い〕

 

11.八つの正しい道とは、どんなことですか。

 

  ①正しい見方、②正しい考え方、③正しいことば、④正しい行い、

  ⑤正しい生活、⑥正しい努力、⑦正しい目標、⑧正しい落着き、

  の八つです。

 

12.正しい、正しくないは、どうしてわかりますか。

 

  自分一人で、正しい正しくないと判断すると誤りが多いので、常に

  すべての人、そして佛さまによく聞くように努め、自分を反省して

  いると、しだいに正しい道がわかります。

 

13.六つのりっぱな行いとは、どんなことですか。

 

  ①他の人々に喜びを与えること。これを「布施」と言います。

  ②互いに、きまりを守ること。

  ③わがままを言わず、辛抱強いこと。

  ④よいことを、一生懸命にやること。これを「精進」と言います。

  ⑤落ち着いて考えること。

  ⑥正しい智慧を持つこと。

 

14.布施というのは、どんな意味ですか。

 

  インドの言葉で「ダンナ」と言います。他の人に恵み、ほどこすこ

  とです。

 

15.他の人にほどこし喜ばすには、物がなくてはできないではありませ

  んか。

 

  いいえ、物や金はなくても、人に施し喜んでもらえる方法がありま

  す。

 

16.それは、どんなことですか。

 

  ①やさしい目つき、②にこやかな顔、③いたわり深いことば、④親

  切な行い、⑤思いやりの心、⑥席をゆずる、⑦家を役立てる、とい

  う七つのことや、佛さまの教えを伝えることなどです。

 

17.たがいに守るというきまりには、どんなことがありますか。

 

  社会には守らねばならない多くの法律や道徳のきまりがあります

  が、その中でも「世界の平和を守り、戦争をしないことが一番大

  切である」と、聖徳太子は教えられました。

 

18.では、どうすれば戦争を起こさないようになり、平和になることが

  できますか。

 

  みんなが正しい教えに従い、お互いに相手の国の人々と話し合い聞

  きあって、相手の心を知り許しあうことが第一です。とかく人間

  は、多く集まると三毒の煩悩(欲張り、怒り、おろかさ)が盛んにな

  りますから、ひとりひとりが強く平和を願うことが大切です。

 

19.正しい智慧とは、どんなことですか。

 

  進まねばならないことと、退かねばならないことを知って、自分の

  道を失わず「空・無我」の道理を知ることです。そうすると、すす

  んで全ての人の幸福を願い、自分だけ良ければよいという心を離れ

  ることが出来ます。